「ッ…!」

氷河の身体は衝撃で舞い、床に倒れ込んでいった。

当然、この事態により、至る所で警報が鳴り響き、赤い照明に照らされる。

烈火が居る部屋は、壁と通路を隔てて格納庫のすぐ近くにあった。烈火の合図と共に壁を突き破る。それがマリンの役割であった。

「烈火…!」

掌を天井の方に向けて待っているソリッド・ウォーカーに向かって、烈火は走り出す。氷河は、倒れたまま銃を向け、躊躇い無く発砲した。

「…」

銃声が轟く。が、氷河の姿勢でまともに烈火を狙える訳もなく、弾は虚しく壁を撃つ。

「…おのれ…烈火」

ソリッド・ウォーカーの掌に乗る烈火を横目に、氷河は側の端末のキーボードを叩き、インカムを頭に着ける。

「管制室、聞こえるか!コマンドZ87752!」

『は…いきなりですか!?』

返ってきた男の返事からは、驚きを感じた。

「急げ!ガキを逃がすな!!」

そう叫ぶと氷河はインカムを放り投げ、部屋を立ち去っていった。


烈火を乗せたマリンのソリッド・ウォーカーはそのまま格納庫に戻り、ドラグーンの前で烈火を降ろす。

素早くドラグーンのコクピットに滑り込んだ烈火は、操縦桿を握り、ペダルを踏み込む。予め熱が入っていたドラグーンは、すぐに動かせる状態だった。

『ねぇ…本当に、本当にこれで良いの?』

スピーカー越しに、マリンの不安げな声が烈火のコクピットに届く。

「さっきの話を聞いていただろう。もはや、ここに居る俺とお前以外の全員の人間は、敵だ」

『でもっ…私…!お母さんやお父さんから何も…』

自分の親は違う。と、思いたいのは当然のことである。

「じゃあ、残るか?ここに残ったら、間違いなく消されるだろうがな」

『…』

マリンは一拍の間を置き、

『わかったわよ…。今まで、烈火の言うことを利いといて、間違った例は無いから』

「…あぁ」

烈火はドラグーンの両手で、固く閉ざされた扉を無理矢理こじ開ける。

『…おい!聞こえているだろう!!今すぐフライトユニットを出せ!!あるのは分かっている!!』

烈火は外部スピーカーの出力を最大にし、モニターから見えている管制室に向かって叫んだ。

『バカな!そんな要求が飲めるか!』

当然の返答。

『そんなことが言える立場か!?貴様等が居るこの一帯!ドラグーンで吹き飛ばすくらい造作も無い!!』

壁に掛かっているドラグーンの槍を取り、振り回してみせる。

『ク…!フライトユニット…用意しろ』

『それでいい』

そして、上方から飛行機の羽のようなブースターが降り、ドラグーンの背部にしっかりと固定される。後に続くマリンの機体にも、フライトユニットが付けられた。

「持てる武器は全て持っていく。ここから脱出する!」

『了解…!』

二人はマシンガンやミサイルランチャー等、手当たり次第に武器を強奪し、腰や腕に固定させていった。

そして、槍で一番奥の扉を突き破り、体当たりで吹き飛ばす。カタパルトなど、今はどうでも良い。

「……!?」

その時、大きな地響きのような振動を、烈火達は感じた。まるで、この島全体が揺れているような感覚だった。

「何かが…起こるのか…?マリン、行くぞ!」

『えぇ』

二人の機体は背中のバーニアを噴射させ、大空へ飛び立っていった。
[戻る]