「…?」
烈火は、微動だにしないSWを見つけた。それがマリンの機体かホーリーの機体は、見た目からは判断できない。
「応答しろ。そこの」
烈火が何度声を掛けても、返事は返ってこない。
「…おい」
呆れた烈火は、SWに近づき、肩に手を当てた。その時、SWの背後に転がっている残骸が、目に入った。
「…SW…?」
烈火は、ポツリと呟いた。そして、スピーカーから、微かに泣き声が聞こえてくることに気づく。
「マリン…?マリンだな?ホーリーは、どうした…!?」
泣き声しか返さないマリンに、烈火は苛立った。
「マリン!」
「…ホーリーが……ホーリーがね…」
ようやく返ってきたマリンの声。
「自爆に…巻き込まれて…!!」
「……」
言葉が出なかった。残骸を見た時点で、ある程度の想定はできた。が、マリンの話を訊いて、事の重さがのし掛かった。
「……帰還するぞ」
しばらく黙り、烈火はそう言った。
「ホーリーのご両親に…ちゃんと言わなきゃな…」
ドラグーンでSWの手をゆっくりと引き、二人は廃墟の街から去っていった。
EPO本部に帰還した烈火とマリンは、真っ直ぐにホーリーの両親が居る仕事場へ向かった。本部の構造は、とてつもなく広く複雑で、烈火もほんの一部しか分かっていないが、ホーリーの両親が居る場所はそう遠くなく、迷うことも無かった。
が、烈火は、ホーリーの死を伝えなかった方が良かったのでは無いかと、両親に話した時に思った。
「…そうですか」
通路でホーリーの死を伝えた後の両親の反応は、驚くほどまでに冷たかった。まるで他人事だ。
「では、私達は、仕事で忙しいので、失礼する」
「え…?ちょ…!」
顔色ひとつ変えずに返ろうとする両親を、マリンが引き留める。
「何か?」
「何かって…、ホーリーが…あなた方の息子さんが、死んだんですよ?」
「えぇ、分かってます。とても残念です」
「…?」
去っていく両親を追おうとしたマリンの肩を烈火が掴んだ。
「来い」
「烈火…?おかしいわよ?おかしいと思わない!?だって…」
マリンの腕を引っ張って歩く烈火に、マリンは必死に言う。
「あぁ、変だ。今思えば、最初から何もかも変だ」
「変…」
「お前の親は、お前が戦場に行く時に、引き止めたか?」
マリンは首を横に振る。
「何も話してない…」
「俺の親父もそうだ。むしろ、戦争に行けとでも言いたそうな様子だった。自分の子供を戦争に進んで行かせるか?自分の子供が戦争に行く時に、何も言わない親が居るか?」
「それって…?どういうこと…?」
マリンの顔色が、次第に悪くなる。
「確かめる事がある。マリンには、やっておいてほしいことがある」
「やっておいてほしいこと?」
烈火は、マリンの耳元でその内容を囁く。
「そ、それって…?あからさまに…」
「何も無ければそれが一番良い。だが…」
T字路に差し掛かった所で、烈火は立ち止まる。
「…できるな?」
「…分かった」
二人は頷くと、それぞれ逆の道に分かれ、進んでいった。