柔らかな陽光が差し込んで、窓の形の日溜りを作っている。そこから広がる様に、部屋の中は愚鈍な暖かさを湛えていた。
やけに豪奢なテーブルの上には、ダージリン・ティーが二脚だけで、余分なスペースが目立つ。しかし湯気と共に立ち上る強い香りは酷く存在を主張していた。
家の中には、今日は自分達だけしかいない。少し口を閉ざせば、直ぐに静けさがするりと入り込んで来る。
平日の午後。謀略的なまでに緩慢な時間。
「良い天気だね。紅茶も、凄く美味しい」
そして目の前のスザクは思う存分、この安穏とした時間に流されている。何一つ疑う事などせずに。
完璧だ、とルルーシュは思う。正に思い描いた通りのシチュエーションだった。まだ下準備が整っただけに過ぎなかったが、何事も土台がしっかりしていなければ上手くいく事など有り得ない。その点、この計画はやはり完璧だ。
「あぁ、本当に、良い時間だ」
自然、笑みを形作ろうとする口元に言葉を載せて、その意味を摩り替える。しかし言葉までが嘘という訳ではなかった。この計画を成功させるには、という真の目的が言外に含まれるだけで。
「でも珍しいね。ルルーシュがただお茶する為だけに僕を誘うなんて」
いつもの通り柔らかに微笑んで、いつも以上にゆったりと言葉を紡ぐ。間違いないだろう、今のスザクには警戒心など皆無だ。勿論、名目は午後のティータイムを過ごす事であるし、しかも俺とスザクの間柄だ、多少意味深に誘ったとしても警戒とまでいく筈はなかった。しかし、慎重にすぎる事はない。
「偶にはこういうのも良いかと思ったんだ。お互い何の予定もないなんて珍しい事だしな」
舞台は整ったが、ここはまだ、もう少し。緩やかな時間にこちらも揺蕩っているのだという錯覚を、与えすぎて損はない。
「確かにそうだね。生徒会、何だかんだでよく集まるし、僕は軍の事もあるから、こんな風に何もない日は本当に久し振りかもしれない」
「お前の一番苦手な宿題もないしな」
ニヤリと笑って付け加えれば、その通りだ、と笑う。予測通り、機嫌も上々。
「ナナリーも一緒にお茶出来たら良かったのにね」
「あぁ、そうだな。でも生徒会でいつでも会えるし、これから先だっていつでも会えるんだ。又誘うよ」
そう言うと、スザクはにっこり笑って肯定の意を示した。我ながらとんだ演技派だ、と思う。今日ここにナナリーも咲世子さんもいないのも計画の一端だと言うのに、いけしゃあしゃあとそんな事を言えるのだから。
少し開け放した窓から風が入って来たらしい、遮光カーテンをひらりと揺らす。しかしそれだけで、こちらには届かなかった。
そろそろ、だろうか。そう思った時、指先がチリ、とする感覚がした。
大丈夫だ。計画に抜かりはない。状況だって、充分すぎる程整っている。後は構想通りに事を運ぶだけで、間違いなくスザクから聞き出す事が出来るのだ。あらゆる場面を想定してシュミレートを重ねたそれを、他でもない自分自身が実行するのだから。例え予測と違う答えを得る事になったとしてすら、こちら側が不利になる様な事は一切ない。それに予測通りの答えが返って来る可能性の方が高いと睨んだからこそ、この計画を実行しようと踏み出したのだ。
確信と共に、感覚を残す指先ごと、強く握り締める。
後はスザク、お前の答えを聞くだけだ。必ず手にしてみせる。
お前が、俺に恋をしているという事実を。
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